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winter's scarecrow

父の日に


父の日、20代の可愛らしい女性と、還暦を過ぎたころの控えめにお洒落な男性。
聞こえてくる会話では娘さんが予約を取って父親を連れてきたみたいだ。
カウンター席で「穴子の天ぷら、美味しいんだから食べて・・」とお父さんをリードしている。
笑顔で接する娘さんに対してお父さんは「旨いな」と一言だけで会話が弾まない。
お父さんは娘さんの気遣いに応えようと、酒を少しだけピッチを上げて呑んでいる。

そんな父の日の光景があった。


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今は高校生の娘と中学生の息子がいるS子、旦那とは数年前に離婚し彼女が子供二人を育てている。

娘は今が反抗期、どう対処していいのやら。

S子が18歳の頃、娘と同じ反抗期。 煙草も酒も飲んでいた。 家へ帰るのは夜中や明け方、帰らない日も。


父親に対する反発よりも、母親の居ない家庭のギクシャクとした空間に耐えられなく、悪ガキたちと一緒に遊び呆けていた。

そんな時、「一度、お父さんと飲みに行かないか? 好きなもの食べて好きなだけ酒も飲んでいい、少しお洒落をしてきてくれないか」

そして、お父さんの行きつけの焼き鳥やに行き、「あれ、彼女できたんかい?」大将の言葉に喜んだ。
そしてスナックでは「お父さんとそっくりじゃない」のママの言葉に満面の笑み。

「俺の彼女だってことにしてくれ」とS子に懇願し行ったクラブではすぐ見破られ、そんな頃からS子の記憶が薄れていった。
それから、居酒屋にも連れて行かれたが記憶にない。

帰りのタクシーでお父さんに凭れかかっていたのは薄っすらと憶えている。
翌朝、起きたら頭がズキズキしていた。 父親はすでに出勤。

キッチンのテーブルに置手紙が置いてあった。

「昨日は楽しかったな、また一緒に行こうな。昨日、お前が飲んでグロッキーした酒の量は憶えているか?中生ジョッキ2杯にチュウハイ5杯、それがお前の量だぞ。誰かと飲んでもその量の手前でうちに帰って来い!」

高校生だったS子の父子家庭での父との思い出。


世の中、娘が30も過ぎるとお父さんは怒られ役になる「はい、お父さんお酒はこれでストップ!血糖値が高いんだから・・」
「お新香にお醤油をかけたらダメ!」
「トイレから出たらすぐ手を洗う」
そんな娘との逆転劇にお父さんたちはまんざらでもないのかもしれない。


by w-scarecrow | 2018-06-19 21:31 | そのほか