ええねん
新国立美術館。 梅雨の晴れ間の自転車散歩。
着替えのTシャツをいつも携帯している。
ずっと厚意にしてもらっている古老の録音技師さんがいる。
昭和20年代後半に東宝撮影所に入り、その後独立プロで数々の名作に携わったこられた技師さん。
その技師さんは権威あるものが大嫌い、当時、東宝では"黒澤(明)天皇"がいた。
誰もがものを言えない存在。 古老の技師さんは今でも黒澤さんの話をすると頭から湯気が出てくる。
独立法人の新国立美術館、黒川紀章の設計。 建築のことは全く無知だがこの建造物を見て黒澤天皇が想い浮かんだ。
色々な展示会やイベントが催されているがチケット売り場は殆ど人が並んでいない。
cafe spaceやレストランに行列ができている。
自転車散歩、あまりにも蒸し暑かったので、それに負けない曲はと想いウルフルズ、大塚まさじ(ザ・ディラン)、憂歌団の関西Bluesのアルバム聴きながらペダルを漕いだ。
♪ 情けなくても ええねん
叫んでみれば ええねん
にがい涙も ええねん
ポロリこぼれて ええねん
ちょっと休めば ええねん
フッと笑えば ええねん
それでええねん それでええねん ♪
トータス松本の歌声が沁みる。
関西弁のトーンの優しさが元気をくれる。
感じるだけで ええねん
笑いとばせば ええねん
新国立美術館を後にして、六本木ミッドタウンへ。
外苑東通り、歩道脇のベンチでお弁当を食べているカップル。こんな情景に何故かすごく感動します。
六本木、大学生だった長兄が小学校低学年の私を連れてイタリアンレストラン『ニコラス』でPizzaを食べさせてくれた。
アルバイトの薄給で高価なPizzaを、まだちっさい四男にご馳走してくれた。 生まれて初めて食べたPizza、この世のものとは想えない美味しさだった。 食の忘れられない記憶。
嘗ての防衛庁(現ミッドタウン)の脇にアメリカ大使館員の大きな宿舎があった。
中学時代、同級生O君のお父さんはアメリカ大使館に勤めていた。
7月4日の独立記念日、宿舎の前にある広い庭でのバーベキューパーティーに誘ってもらった。
私の母の作るカレーも肉ジャガも、すき焼きもみんな豚肉。
目の前で焼かれる分厚いステーキ、ハンバーグ、スペアリブ、青い目をした子供たちが走り廻る、アメリカのTVドラマ『ルート66』や『うちのパパは世界一』の世界が目の前でくり広げられていた。
丸干しや大好きな錦松梅ばかり食べている母に、このステーキを1枚、持ち帰ってあげたかった。
赤坂氷川神社、ミッドタウンの裏手に広がる静寂。
苔が絨毯のように至る所に敷きつめられている。
樹齢400年の大銀杏、空襲で投下された焼夷弾で樹の中心部が焼け、ポックリと空洞になっている。
新しい枝が芽吹き、空に向かって何本も伸びている、この生命力に圧倒された。
絵馬に願い事を書こうと思ったが、煩悩だらけなので気持ちのこもった言葉が見つからない。
憂歌団の木村くんの歌う『女町エレジー』がイヤホンから流れてきた。
♪ 女に生まれて よかったわ
本当はいいことないけれど
せめて心で 思わなきゃ
生きてはいけない この私
生駒は 哀しい女町 ♪
赤坂の花街にぴったりの曲だった。
by w-scarecrow
| 2010-07-16 08:15
| 散歩