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winter's scarecrow

旗を振る少年

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父の日の昨日、埼京線十条駅で降り、東十条にある黒松本舗・草月へ。
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岸朝子さんの著書『東京五つ星の手みやげ』の表紙にもなっているどら焼き『黒松』。
黒糖の皮生地でつぶ餡を包んだどら焼き。
ホカホカの生地に黒糖の深い甘み、黒糖というよりメープルの風味を感じてしまう。
年に3度くらい、この黒松を求め十条まで足をのばす。 いつもの行列。

  黒松本舗草月
  北区東十条2-15-16 定休日・火曜日

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黒松へ行くには長~いアーケードの十条銀座商店街とは線路を挟んで反対側の下町情緒溢れる小さな商店街を抜けてゆく。
映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のたばこ屋のおばさん、もたいまさこみたいな人がいっぱい歩いていた。
小雪のやっている昭和の匂い漂う飲み屋もあった。
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十条篠原演芸場、建物の脇の日陰にはおばちゃんたちの列、みんな何かを食べながらの話の環。

東京は気温30度、午前中でも蒸し暑くリュックを背負っている背中から汗がしたたる。
作家・宮本輝の初期作品、関西の下町を舞台にした小説が多かった。
この十条の界隈を歩いていると、『星々の悲しみ』という短編集を想い起こす。
表題作の短編はある喫茶店に飾ってあった"星々の悲しみ"という20歳で夭折した画家志望の青年が描いた絵を、3人の浪人生が盗みだす。
その絵から見えてくる人の生死、希望、さまざまなインスピレーションを受ける。
瑞々しい10代後半の彼らの感性、スポンジのような感受性を楽しく儚く描いていた。

その短編集のなかに『小旗』という小品があった。
青年は父の危篤の知らせを受けつつ、パチンコ台から離れられなかった。街を歩きおでん屋で酒を呑み始める。
彼の父は放埓な男、父としても夫としての資格もない男。 愛人には追い出され事業には失敗し、家には寄り付いたことがない。
生まれてから父親の負債を抱えての母との生活、一般的な家庭の団欒など夢にも出てきたことがない。
病院にいる母親から父の訃報を聞く、母親から「なぜ来れなかったの?」の言葉に「・・うん」としか言えなかった。
病院へ向かうバス、道が細くなり工事中の為の一時停車、青年の目には交通整理をやっている、さほど年の違わない少年が映った。
手に持った赤い旗を何度も降り、車を誘導している。 
空に翻る赤い小旗、誘導している少年の真剣な眼差し。 バスのなかで少年を見つめている目から涙が止めどなくこぼれてきた。

そんな宮本輝の小品を想い出す。 私が初めて映画の仕事をしたのも宮本輝原作の作品だった。
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十条から目白へ。
雑司ヶ谷の鬼子母神で手作り市が催されている。
先日、鍋つかみを買おうと思い検索をしていて「そうだabebeさんのBlogに彼女の作った鍋つかみがあったはず・・」
私のblogにもcommentを残してくれるabebeさん、手作り市に出店をしている。
写真にある鍋つかみを手に入れた。
他にも素敵なバックや小物入れの数々が並んでいた。
¥800、そんなに安くてよかったのかな・・。
大事に使おう。
by w-scarecrow | 2010-06-21 17:49 | 散歩