winter's scarecrow

吉野 弘 詩集

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『生命は』 いのちは  

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする

生命はすべて
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうものだ

私は今日、
どこかの花のための
虻(あぶ)だったかもしれない
そして明日は
誰かが
私という花のために
虻であるかもしれない



『吉野弘詩集』より 
青土社 1981



汐留付近を歩いていると躰のすべてが渇いてくる。
東京湾から吹く海風にも湿気を感じない。
今すぐに、人の呼吸が感じられる場所に行きたい。言葉をかわさなくてもいい。
人の息遣いの中でホッと息をつきたい。
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# by w-scarecrow | 2008-11-26 18:41 | | Comments(4)

はれま

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京都川端通に『はれま』というチリメン屋がある。
10年ほど前、錺(かざり)金具の選定保存技術保持者の偉いおじいさんのdocumentを撮っていた。
寺社や二条城などの建築物を飾る錺金具、神輿の細かい金具の部分も錺金具という。私も実際に京都へ来るまでは錺金具という言葉も知らなかった。
職人さんの作業を見ていると楽しくてしょうがない。作業の詳細の説明を聞いていると未知の世界へ這入っていく興奮と驚きがある。
このおじいさんの昔話がまた面白い。京都の職人さんたちの遊び、艶気があり粋でもありスケールが大きい。
こういう旦那衆が何百年と京都の文化を支えてきたのだなと納得させられる。
「おやじさん、京都土産に買ってゆくとしたら何がいいですか」と訊いたら『はれま』のチリメン山椒がいいと奨めてくれた。
京都ではよく見る町家の一角にお店がある。なかへ入ると商品がなにもない。
ドキマギしていたら「おこしやす」と店の人が出てきた。商品の陳列していない店に入ったのは初体験だった。
『はれま』のチリメン山椒は東京では高島屋で買うことができる。こちらではちゃんと陳列してあります。

白米にのせて山椒の風味を味わいながら食す、しっとりとしたチリメン。
あのおじいさん元気かな?と食べるたびに想い出す。
おじいさん<紫>が頭につく勲章をもらったらしい、やっぱり粋な職人は紫がよく似合う。
京都は今頃、街中でも紅葉が観ることができるのかな。「そうだ!京・・」やっぱ今度にしよう。
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# by w-scarecrow | 2008-11-24 15:43 | 食 + うつわ | Comments(4)

遠い日の花火

1998年、横浜の空に幾度ともなく花火が上がっていた。
寺山修司の一文に「五月に咲いた花なのに、散ったのも五月だった」というのがある。
亡き母に捧げた言葉を引用するのは失礼だが、大洋(横浜Baystars)ファンにはシミジミっとくる言葉である。
4,5月はなるべく家で野球中継を観ながら酒をのんでいる。節約にはもってこいである。
5月の終わり頃になればBaystarsの結果を横目で見つつ外で酒をのんでいた。
勝ち負けより若手の台頭。悲しいかな下位球団のよりどころ。
毎年、こういうリズムで生きてきたのにこの年はその沁み込んだ習慣が壊されてしまった。
5月の連休もTV、梅雨の小雨振る日もTV、神宮球場へも横浜スタジアムへも足を運んだ。
こんなことは以後38年間は絶対に見ることができない。横浜ナインの勇姿をこの目に焼きつけなければ・・との熱い想いで缶ビール、バーボン、リッツをリュックに詰め込み球場へ。日々燃え尽き、酔い倒れ。
1998年10月。やっとその日がきた。酒とマルハのソーセージを買いこみ準備開始。
優勝が決まったあとDominoピザを注文したいのでメニューを見て注文するピザを確認『ドミノ・スーパー・デラックス』に決めた。
そしてVideo録画の準備、3倍速ではなく奮発して標準で録画をすることにした。HGのテープは3本用意してある。
初めてVideo Deckを買ったときに小林麻美のヒット曲『雨音はショパンの調べ』を標準録画して以来だ。
あとは電話器を冷蔵庫にしまっておこうと思ったのだがコードレスではなかったので押入れの敷布団の間に挟む。準備完了。
そしてその時がきた。1998年10月8日、午後8:56 甲子園球場に権藤監督が鳥のように舞った。38年ぶりのセリーグ制覇。
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2008年、あの溢れんばかりの泪を流した日から10年が過ぎた。
今年も例年と同じリズムで1年が過ぎた。
西武vs巨人の日本シリーズをNHKの『きょうの料理』とはしごをしながら眺めていた。
高校、大学、社会人野球を自分が横浜Baystarsのスカウトになった目で追っている。
そろそろ来年の有望選手のチェックをしなければと実らぬ恋をつづける日が始まる。
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# by w-scarecrow | 2008-11-23 17:47 | baseball | Comments(0)

竹中健次 備前

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竹中健次 『備前白釉湯呑』
口径 6.6-7.0cm 高さ 9.5cm

1957年 岡山市生まれ
1988年 人間国宝・伊勢崎淳氏に弟子入り
1993年 半地下式穴窯を築窯









紐作りにより胴部に穏やかな膨らみをもたせた六角のフォルム。繊細な貫入。
緊張感のある口造り。淡雪のようなぼってりとした風合いの湯呑。

ジュエリー・デザイナー出身の竹中健次さん。斬新でオブジェをつくっているような造形感覚の作品群。備前を知り、備前を求め、探求する。そういうベースが無い限り壁を超えた使い手の心を揺さぶる作品はできないのかもしれない。
タイプは違いますが同じ伊勢崎淳門下の隠崎隆一さんの作品も唸ってしまいます。
星野聖、小川壮一や若手の荻野雅也、森本良信、新しい感性が備前にはうごめいています。
さまざまなタイプの備前の作家さんたちの作品が楽しめて日々発見です。
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# by w-scarecrow | 2008-11-19 12:05 | うつわ | Comments(2)

小雨の日曜日

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11/16 恵比寿ガーデンプレイスにある東京都写真美術館へ『American Mega Max 1957-1987』を観に行く。
ビート・ジェネレーションを象徴するジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』が発表された1957年からウォーホールが亡くなる1987年までのアメリカを映した写真展。
キング牧師の写真の前で足をとめた。人としての当然である権利を得るために銃弾に伏すことをも覚悟して声をあげた。あれから40数年、バラク・オバマが次期大統領に就任する。
彼の目には未来の画はどう映っていたんだろう。
アメリカはどこへ向かって歩き出してゆくのか・・。<動>のアメリカを感じました。
経済人が国を動かすのではなく、学生が女性が差別を受けている者が普通の市民が国を変えてゆく。
そんなアメリカがありました。イデオロギーではない内なる声が。

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アメリカ橋から目黒方面を見る。列車がやってくる。
小さい頃、この橋を渡ることが怖かった。狩人の歌うロマンチックな橋ではなかった。
トラックがやっと1台通れる時代物の鉄橋だった。


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雨が少し強くなってきた。
駒沢通り沿いにある珈琲屋へ豆を買いに行く。
1981年創業の『ヴェルデ』。入口の脇に年代物の焙煎機がある。
3段階の焙煎度別に珈琲を選べ,ネル・ドリップを使って一つ一つ丁寧に淹れてくれる。
今日は深煎りの『スマトラ』の珈琲豆をを購入した。
小雨の日曜日、そろそろ珈琲ではなくビールの時間になってきた。




ヴェルデ

渋谷区恵比寿西1-20-8





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# by w-scarecrow | 2008-11-17 08:12 | tea | Comments(4)

Don Friedman

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Don Friedman / A Day in the City
D.Friedman(p) Chuck Israels(b) Joe Hunt(ds)
Recorded in June12,1961

ドン・フリードマン
1935年San Francisco生まれのjazzピアニスト。
Dexter Gordon,Shorty Rogers,Chet Bakerらと活動し、1958年、N.Y.C.へ進出。
この A Day in the Cityが彼のファースト・アルバムである。
’60年代初めのN.Y.C.の街を写したジャケット写真。
BLUE NOTEにはフランシス・ウルフという有名なカメラマンがMusicianの自然体の姿を切り取り少しの遊び心で見事なアルバムデザインをしていました。
BLUE NOTEの創始者であるアルフレッド・ライオンとはベルリン時代のレコードコレクター同士。コレクターだからこそjazzファンの満足できるジャケット作りをしてきたのだと想う。
このRiverside Recordsはオリン・キープニュースがBill Evans,Thelonious Monk,Wes Montgomeryらをメインとして製作してきたレーベルである。BLUE NOTEと違ってポートレイトのカラー写真のジャケットが多い。センスはあまりよくないレーベルです。
そのなかでA Day in the Cityの写真は印象的でした。

日本でD.Friedmanという名前が知られ始めたのは翌年の1962年に録音された『Circle Waltz』がきっかけである。ファーストアルバムの録音から二ヵ月後に録音された『Booker Little & Friends』に鬼才Reggie Warkman,Pete Larocaとの強力なリズム・セクションで参加していた方を憶えていたファンも多いはず。
マンネリ化したハード・バップから脱却するんだという想いが夭折した天才トランペッターBooker Littleと若き共演者からひしひしと感じられました。

jazz批評家たちのいう「ビル・エバンス派」「バド・パウエル派」の区分け、D.Friedmanに限ってものBill Evansとの対比ばかりを目にする。同じ時代N.Y.Cで活動していた白人のピアニストなら多かれ少なかれ影響は受ける。
この頃のD.Friedmanのアルバムを聴いていると時にBud Powellだったり、MonkだったりB.Evansだったりします。それがD.Friedmanなのである。

このジャケット写真は左側が少し黄ばんでしまっている。’70年代の終わりにBerkleyの古レコード屋で購入した。アメリカに行くというと「欲しいレコードリスト」を何人かの人から渡される。
探すのは大変でしたが旅費が浮くくらいの金額になるときもありました。
彼らはBLUE NOTEの1500番台のfirst pressだったらなんでもいいという。jazzファンというよりレコード盤ファンだったので。高く買ってくれました。
自分が欲しかったのはPacific Records『Russ Freeman Trio』の10inch盤。A day in the Cityと同じくジャケットがいいんです。
Don Friedmanは世紀の変わった今も昔と同じように瑞々しい旋律を奏でています。嬉しいですね。
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# by w-scarecrow | 2008-11-15 16:15 | music | Comments(4)

野の花

朝起きてTVをつけて『ジャパネットたかた』社長の頭のテッペンから出てくる声を聞くとなんと目覚めのいい一日だろう。
社長の声を吹き込んだ目覚まし時計が発売されたら真っ先に電話をするのに。
渋谷から井の頭線に乗り歓楽街の神泉のトンネルを抜けると長閑な風景に一変する。
右手に東大駒場のキャンパス、左手に駒場野公園。
旧東京教育大農学部の跡地にできた公園。明治の頃は駒場農学校という名称。
敷地の手前に『ケルネル田圃』明治時代に教鞭をとったドイツ人農学者の名を冠した田んぼで今でも田植えをつづけている。
ケルネル先生も札幌農学校のクラーク博士みたいにちょいと気の利いた言葉を発していればここに銅像が建っていたんだろうと想う。なにか小粋なこと言わなかったのかなー。
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敷地の奥に<野の花>を集めた一帯。そこに咲いてた可憐な花。

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公園の入口で電車を観にきた園児たちの桟敷席。あまり電車には興味のないようすでした。

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園児たちの眺めている先にある『Boulangerie Le Ressort Patisserie』 
四種類のお豆パン、トルコ産乾燥イチジクが入っているもの、オリーブパン。
カイザー出身の方がやっているとのこと、サクサクしっとりのクロワッサンも美味。  
  
  『ル・ルソール』
  目黒区駒場3-11-14    8:00am-7:00pm営業   定休日:月曜日、第3火曜日
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# by w-scarecrow | 2008-11-14 20:29 | 食 + うつわ | Comments(2)

ひと滴の風景

それぞれにお茶にまつわる風景があると想う。
大井川上流の傾斜地に広がる茶原(茶畑)を朝霧が包みこむ情景。鹿児島県知覧の茶畑から見る夕陽に浮かぶ開聞岳のある風景、遠くに日向灘を見下ろす高鍋の茶畑。
茶畑は関東以南では少し足をのばせばどこでも見ることのできる風景。

お茶をのんでホッとする。張りつめていたものがゆっくりと解かれていく。ひと滴の幸せ。

20代のはじめ冬の北海道に旅をした。釧路、根室、知床。旅の最後で高校の教師をしている友人の住む町へ行く。網走から湧網線の最終列車に乗った。
中湧別という小さな駅舎で迎えにくる友人を待った。マイナス何度だったんだろう?ガタガタ震えていた私に「中へどうぞ」という同世代の駅員。お茶をi淹れてきてくてた。「すぐ来る!と言っても北海道のすぐは内地の人にとってはかなりの距離だと思いますよ」
温かなお茶のぬくもりが伝わってきた忘れられない一服。
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川根『つちや農園』の煎茶。
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# by w-scarecrow | 2008-11-12 07:31 | tea | Comments(2)

スケルトン

実家へ寄るため日比谷線の広尾で降りた。
小学生の頃、有栖川宮記念公園の辺りは小さな外国人租界。
自転車で走り廻りナショナル・スーパーの前でばかでかい紙袋を抱えた外国人の家族連れを眺めていました。
とりわけ同世代の少年の持っていたオモチャを食い入るように見ていた。
ワァー欲しい!U.S.A.TOY! ずっと心に残っています。
今日はナショナル・スーパーへ寄るのはやめとこ。X'masにあまり美味しくない?!米国製の冷凍のターキーを買いに来ればいいか。


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明治屋ストアーの2Fの

ギャラリーで素敵な湯呑をみつけた。萩、備前、九谷を主に扱っている店。
天現寺交差点の方に歩くと白いスケルトンみたいな建物。
曇り空にいい具合に調和している。コクヨだとか東急ハンズもこんな玩具箱みたいな建物にすればいいのに。


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口径5.8-6.4cm 高さ9.0cm

辻村 唯 『湯呑』
1975年 奈良生まれ。父である辻村史朗氏に師事。
2000年 奈良県水間に築窯し独立。

5世紀から焼かれ15世紀までその伝統が残っていたという須恵器、青灰色で硬く焼き締った器。その須恵器に魅せられた辻村唯のビードロが淡く肌をそめた爽やかな湯呑。
辻村唯さんの酒器はよく見かけるが湯呑は初めてでした。
いつもそばに置いていたい湯呑です。良かった寄り道をして。
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# by w-scarecrow | 2008-11-11 20:15 | うつわ | Comments(2)

はじめまして

René CIément (ルネ・クレマン 1913-1996)

『鉄路の闘い』で第1回カンヌ国際映画祭で監督賞、作品賞を受賞。
『禁じられた遊び』『太陽がいっぱい』など大戦中から反戦映画をつくり、戦後もサスペンス、恋愛映画、コメディーなど多様な作品を送りつづけてくれたフランス映画界の名匠。

この写真はジュネーブへ向かう列車でクレマン監督からいただいたサイン。
穏やかな表情が彼の骨太の作品群からは想像できなかった。
人を包みこむような優しい笑顔を浮かべていた小柄なフランスの老紳士。
クレマン監督と一緒に仕事をさせてもらった思い出が甦ります。
1996年3月17日、モナコで83歳の生涯をとじました。
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music、映画、本、物、食、うつわ、アマ・プロ野球など
おそらく退屈してしまいそうな文を綴っていきます。
骨休みにのぞいてみてください。
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# by w-scarecrow | 2008-11-10 06:21 | 映画 | Comments(2)