winter's scarecrow

カテゴリ:そのほか( 220 )

スイカ

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スイカが恋しい季節になってきた。

半月に切られた果肉にガブッとかぶりつく。喉をごくりと鳴らし、みずみずしい甘さがいくつもの夏を想いおこさせてくれる。

私の通った小学校はまだ古い木造校舎が残っていて、一、二年生のときは机も木製の二人用だった。

その二人用の机は境界線が不明瞭で消しゴムがはみ出ているだとか、肘が国境を越えたとか、ささいな争いが絶えなかった。

幸い隣に座る Y 子は体育は不得手だったが物静かなやさしい子だった。

昼休み、彼女はひとり机に座り黙々とリリアンを編んでいた。ミカンみたいな色をした編み物が少しづつ顔を出している。

そんな見事な技に魅せられ私もやってみようと・・・。


「男がやるもんじゃない」と母に言われるのは解っているので、高校生の姉にねだってみることに。


「絶対、みんなに言わないんでほしいんだけど、オレもリリアン買ってもらったんだ」

打ち明けられた Y 子から『今日から仲間だね』と言わんばかりの笑顔が返ってきた。


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Y 子のお父さんは小学校の真ん前にあるビール工場に勤めていた。

私はいつものように近所の酒屋の立ち飲みコーナーで清酒を呑んでいる父親を迎えに行く途中、Y 子とお父さんに出くわした。

すれ違いざまに軽く手を振るY 子。お父さんの手にはネットに包まれた大きなスイカがあった。


「そろそろご飯だから帰ってきてって」「お前、食うか」と、つまんでいた鯨の大和煮の缶詰を差し出すわが父。
「クジラはいらない」

いいな~よそんち。


日本一のスイカの出荷数を誇る熊本県。5月が出荷のピークだったらしいがどうだったんだろう?
丸々一個のスイカを食べたいですね。

種をプイップイッとベランダの端まで飛ばして・・・。
by w-scarecrow | 2016-06-27 18:40 | そのほか | Comments(0)

お宝

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母の日の華やかさにはまったく及ばない父の日。

地方紙に父親の想いを綴ったエッセイが載っていた。


「(抜粋)あのころに戻りたいと思うことがあります。もう一度やり直したい場面がいくつもあります。
お父さんは世界でいちばん強い、お父さんは世界でいちばんモノ知り。それを信じていた子供たち。

生まれたときは『生きてればいい、それだけでいい』そう思っていたはずなのに・・。

子供たちが成長するにつれ、いつの間にか『オマエのためだ』といいながら、親のわたしたちの欲のために子供を叱り、わたしたちのミエのための子育てをしていることがありました。
わたしたちは『世間に自慢するための子供』を育てたいと思っていたのでした。

そんなわたしに叱られて、泣きながら眠ったその顔に、涙のあとがくっきりと残っていました。
その涙のあとを拭きながら、わたしはなんと愚かな親だろうと思いました。

わたしはそのつど子供たちに許してもらって親を続けてきたのです。

いま、わたしの願いははっきりしています。
子供たちが幸せでありますように。この世に生まれてきたことを喜べますように・・。
そのほかのよいことは、オマケなんだと思います。



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学生時代の友人は父の日に娘さんから高級育毛剤をプレゼントされ、「そんなにイッてるのか?!」と育毛オタクになってしまいました。

別の友人は父親とそっくりな顔が娘さんのコンプレックスになり、思春期のころは「傍を歩かないで!」とキツイ禁止令をもらってしまった。
娘さんが幼稚園のときに描いたお父さんの似顔絵がお宝だという。” だい好きなお父さん、おしごとがんばって!”

父の日の悲喜こもごも、次の日の飲み屋は失恋した若者のように肩を落としたオジサンたちでにぎわっている。
by w-scarecrow | 2016-06-24 16:04 | そのほか | Comments(0)

SATO

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6月も3分の2が過ぎたのに、まだ台風が一つも発生していないのは18年ぶりだという。

NASA の発表でも史上最も暑い夏になるらしい。

浅草や鎌倉の人力車での観光も近い将来、ラクダに乗った寺社巡りになるかもしれない。

北向きの部屋に引っ越しをしておいてよかったっ。


降雨の少ない東京の町のアジサイたちは潤いのファンデーションも塗れず、七変化ができずにいる。 古来日本生まれの花なのに江戸時代以前の歌や文学には殆ど登場しない。

先人たちは心変わりの七変化を嫌っていたのかもしれない。

今やアジサイの名所は人、人、人。 

一色に染められる愚に気づいたのかも。


S さんからいただいた佐藤錦、ベッピン揃いだ。小さな小錦から食べることにしよう。
by w-scarecrow | 2016-06-20 19:43 | そのほか | Comments(0)

ぬか漬け

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ケルト神話ではナナカマドは魔女の木といわれ、霊的な力を呼び起こす力があるとされている。

ファインダーを通して眺めていると「おとぎの国」へと引き込まれていきそう。

妖精たちにはそんな遇いたくないが、クッキーを作っているクッキーモンスターには会ってみたい。


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              米ぬかを蒸す干す炒る
              一つかみ天塩ほうりこんだ
              水を沸騰させて よく冷やしてくわえる
              みそぐらいの固さにして それから
              昆布 赤唐辛子 ショウガ 魚の頭

              古いパンを少し ビールをちょっとという感じ
              しっかりした樽か 瓶につめる
              
              漬けるものは何だっていい
              きみの時間を漬けてみるといいよ
              ぬかみそは毎日ってことが大切なんだ
              日に一度手を突っ込んで掻きまわすんだ
              
              新鮮な空気がたくさんほしいんだ
              風をいっぱいに通してやるんだ
              酸っぱくなってきたら 重層を一つまみ

              こころのカケラを二ツ三ツ混ぜてやる
              孤独な生きもののように
              冷たくて暗いところがぬかみそは好きだ

              急いではいけない
              ぬかみそを漬けるとわかる
              毎日がゆっくりとちがってみえる
              手がはっきりとみえる


                                     長田弘詩集「食卓一期一会」より


デパ地下でいつものようにぬか漬けをかってきた。きゅうりにナスにカブ。
スーパーでパックに入っているぬか漬けは塩っからい。

おふくろやばあちゃんの味がしない。 

自分で漬けたいという欲求を抑え毎回毎回買っている。ハマったら最後なんです。

「漬ける」行為はまさしく時間を感じるということ。ぬか漬けができあがるまでの時間も一緒に食卓で味あう。

いいな~。
by w-scarecrow | 2016-06-13 20:16 | そのほか | Comments(0)

アンテナ

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「ベトコンはオレをニガーとは呼ばない、アジアの貧しい人を殺すなんて冗談じゃない、白人こそ自由の敵だ」

ローマオリンピックで金メダルを獲得し、その後も数々のタイトルをものにしたムハメッド・アリ、変わらない差別に憤り入店を断られたレストラン近くの川にメダルを投げ入れた。

ベトナム戦争への徴兵を拒否し、それまでの栄光のタイトルを剥奪された。

「過剰なほど自己を信じる能力」とアリについて作家・沢木耕太郎は著書 " 一瞬の夏 ” で記している。

ロサンゼルス五輪での聖火を危なげに持っていたアリの姿が甦る。 権力や裏社会と闘いつづけてきたスターが病魔と闘っていた。 

闘うこと、どれだけの負荷をかけ自分と闘ってきたんだろう?


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返還前の香港の旧・啓徳空港へ初めて降り立ち、九龍から裏街へ行った。

ダストから流れてくる強い香辛料や油の匂いが人々の放つ体臭と相まって街中を包み込んでいる。

狭い小路には生きたままの食肉用の鳥たちやケージに入った爬虫類が店頭に並び、短パン一丁の主人が煙たそうに煙草をふかしている。

華やかなビル群の狭間とその影に暮らす人々。

そんな歴史ある街の匂いと混沌と、デカダンと奔放さと熱気に私は圧倒されつづけた。

沢木耕太郎の " 深夜特急 " で沢木が乗った香港島へ向かうスターフェリーにも乗ってみた。

今まで自分が身を置いていた酔狂な街路の興奮から覚め、心穏やかになっていく・・。


『私が旅という学校で学んだことがあるとすれば、それは自分の無力さを自覚するようになったのかもしれない。旅に出なかったら自分の無力さにずいぶん鈍感になっていたような気がする』

『無力な自分が悪戦苦闘をしているところを、他人のようにどこからか眺めていると、少しばかりいじらしくなったりもする。おい、おい、そんな頑張らなくてもいいものを、と』沢木耕太郎

" 深夜特急 " を読んで香港・マカオ、南アジア、インド、イスタンブールへの旅をされた人も多かったはず。

あの当時の私には「未経験」という財産つきの若さがあった。

今は、寅さんのように日本の風情ある地方都市で、どこからか現れるマドンナと出逢う、そんな軟派な旅を夢見ているかもしれないが、まだ当時のような感受性は残っている、と思う?!

感受性のアンテナを磨きながら期を待つことにしたい、と思う。 頑張ろうっ。
by w-scarecrow | 2016-06-08 19:35 | そのほか | Comments(2)

ゾウさん ありがとう

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                    思い出さないでほしいのです
            思い出されるためには 忘れられなければならないのが いやなのです

                                         寺山修司
 


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井の頭自然文化園で69歳で逝ってしまった象のはな子さん。 はな子さんの干支はイノシシ、料理家・平野レミと同じ年。

タイの王宮で大事に育てられ、2才のときにゆらゆら船に乗ってニッポンへ。

はな子さんは武蔵野の地で毎日どんな夢をみていたんだろう?

緑眩しい森林の夢?

やさしいお母さんの長い長い鼻の夢?

花をたむける年配の人々、涙を流している人、それぞれの思い出がはな子さんがいなくなったステージに重なり合っているようだった。


新入社員なのかお決まりの黒いスーツの女子2人、デニッシュにカフェラテ。
「本気出したら仕事も付き合い(男)も上手くいくと思ってた・・・」

聞こえてくる声に私の方もしんみりとしてきた。

回転寿司であれば取り逃した皿もまた回ってくる。
短い一生、どんな人たちと出逢えるかがすべて、デニッシュを食べ終わったら本気出そうっ。

横浜 DeNA ベイスターズが調子を取り戻してきたので日々一喜一憂、疲れきっています。





                                       
by w-scarecrow | 2016-06-04 14:52 | そのほか | Comments(0)

うつり気

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         思いきり愛されたくて 駆けゆく六月 サンダル あじさいの花   俵万智


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東銀座のビルとビルの狭間で野菜を売っている86歳のおばあちゃんがいる。

働く女性の笑顔のなんと綺麗なこと。 おばあちゃんは茨城から毎朝新鮮な野菜を1mはある大きな籠を背負ってやってくる。


昭和30年代から千葉から来る行商のおばちゃんたちの専用車両が京成電鉄にも国鉄にもあった。もんぺを穿き籠を背負い都内各地のお得意さまの家々を売り歩く。

私の家にも物心ついた時から千葉からのおばちゃんがやってきた。 多めに野菜を買ったときは干し芋をサービスで置いていってくれた。
「w ちゃん、好き嫌い言わずにいっぱい食べて大きくなんなさいな」

おやつには、よそんちみたくゼリーやホットケーキを食べたいが、いつも干し芋か味噌おにぎり。
干し芋はいまだに嫌いだ。


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瀬戸大橋が開通してからは高知のトマトもピーマンもショウガも採れたその日の新鮮野菜が東京へ入ってくる。
鳴門金時、愛媛の新種の柑橘類。東京では流通が少なかった野菜が今は身近な存在になっている。

秋田のジュンサイ、宮城の曲がりネギ、大阪の水茄子、各地の名産品がアンテナショップを回れば手に入る。
そんな野菜たちを手にしたときの幸せな気分。 

6月、緑色をした野菜たちの旬を迎える。 いつも行く飲み屋さんで出してくれる東京狛江市で採れた枝豆が抜群に旨い!

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     ” 安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから ”

広島・平和記念公園にある原爆慰霊碑に刻まれた碑文には主語がない。 人類の使命。


雨に濡れた紫陽花はより色の深さを増す。 紫陽花の七変化、無情、移り気などの花言葉、そんな浮気な花々に包まれてみたいですね。
by w-scarecrow | 2016-05-30 22:36 | そのほか | Comments(0)

おもいでポロポロ

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                   代々木上原の銭湯&コインランドリー



「希望とは地上の道のようなもの」魯迅は言っていた。

もともと地上に道はない、歩く人が多くなればそれが道になる。祖国に失望しもがいていた文学者・魯迅。


今まで出逢ってきた人たちに、自分には全くない大きさ、大らかさ清々しさを感じるときが多々あった。

この人はどんな所で育ってきたんだろう? 海も山も青い空も済んだ水もその人背中の向こうに広がっている。

いつも思う。土。

私は幼稚園も小学校もそれ以降も土を踏んで通学することはなかった。 小学校の校庭はコンクリートだった。

土を踏むことがなかった。土の上で遊ぶことも少なかった。


高畑勲監督の映画 " おもいでぽろぽろ " 、主人公のタエ子は親の代から東京育ち、夏休みに祖父母の待つ古里へ帰省する友達が羨ましくてしょうがなかった。

夏休みの宿題の作文の題材が私もなくて困った。

父も祖父もよく判らない先祖も東京生まれ。帰省する古里がない。

虫捕りや川遊び、田舎の夏祭り、縁側でスイカの種をプイプイと飛ばすこともなかった。

タエ子は20歳を過ぎてから親戚が住む山形へと足しげく通うことになる。

私も大学時代の友人の住む静岡や東北、北海道へとポカリと空いた穴を埋めるように勝手に帰省することにした。

なんでこんな性格な人間になったんだろう?と想う。 「土」なんだ、きっと。
by w-scarecrow | 2016-05-25 22:13 | そのほか | Comments(0)

おから

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              ゴマ和え


                台所に立てば
                菜をゆすがなくてはなりません
                菜をゆすいだら茹でなくてはなりません
                
                台所に立てば
                火はほうほう言うし
                鍋はじんじんじんじん
                そこで塩を一つかみ
                菜が色よく茹ったら
                水に放さなきゃならないし
                そろえて絞ったら切らなきゃならないし

                台所に立てば
                重ねたお皿はカチャカチャカチャ
                湯気やら煙やら
                あっちから こっちから
                そらそらゴマがピチパチ跳ねて
                アッチチ 鍋掴み鍋掴み
                布巾 摺り鉢 菜箸 醤油

                台所に立った途端にドミノ倒しがはじまって
                ひっかかっている心配事は
                こぼれ落ちそうな悲しみ事は
                あと回しにしなきゃあ なりません


                                山崎るり子詩集(思潮社刊)


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何気ない毎日が風のように過ぎてゆく、どこに向かって吹いているんだろう・・。

うつろいやすい春、少しづつ何かがずれている。



『トントントン、日野の2トン』と呟きながら、駅からの坂道をのぼっていく。

坂のてっぺんにはいつもの豆腐屋さん。

また生揚げ(厚揚げ)の肉詰めが食べたくてのぼっている。ねぎと挽肉は背中のリュックのなか。



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「すみませ~ん、卯の花を2パックください」と40歳代の母親。

卯の花や豆腐屋ならではの惣菜が店頭に並んでいる。

「これ豆腐で出来てるの?」と中学生くらいの娘。

「おからの炊き合わせ・・」

「おから?!卯の花って名前がキレイだね」




おからは " 空っぽ " " 中身のない " という意味。 

でも椎茸やニンジン、こんにゃく、ごぼうなどと出し汁で鍋にかければ、美味しさをいっぱい抱き合わせた一品ができあがる。

私も次に来たときはおからを買って帰ろうっと。 いいね日本の食。


    ” 卯の花の 匂う垣根に ホトトギス早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ ”
by w-scarecrow | 2016-05-20 18:04 | そのほか | Comments(0)

校 歌 

   ♪ この丘の ひかりかがやく空のように いつも明るいこころでと・・ ♪

桜の花の咲くころ、雨に濡れたツツジに導かれ歩くとき、壊れたようなオルガンの音がよぎったとき、ふと母校の小学校の校歌を口ずさんでいることがある。

たのしいとき、北京の空みたいな心地のとき。


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   なんとも楽しい校歌をもつ小学校がある。


                  ♪ おはようさん あら カタツムリ
                   るん るん る るん るん
                   おはようさん カタツムリ
                   宇宙人なのね 光にまみれて
                   うれしいな うれしいな
                   いらっしゃい カタツムリ
                   ここは上鷺宮小学校
                   露のおいしさ おしえてね
                   露のおいしさ おしえてね ♪ 

                                      作詞:宗左近  


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GW中に同じ校歌を歌える人と居酒屋で焼酎を呑んだ、あの文房具屋さんはまだあるの? ハンコ屋の息子は? あの煙草臭い先生はどうしてるんだろう? うさぎはもういないよね?

彼女の息子さんも同じ母校の現役小学生、「いいよね、同じ校歌を歌えるって」

いつも気を張っている働き者のお母さん、ふと ♪ この丘の ひかりかがやく空のように ♪ と、しんどいときにお母さんは口ずさむんだろうか?

東京の空、輝いています。 春っていいね。 銭湯でも行ってこっ。

                                   
by w-scarecrow | 2016-05-07 11:54 | そのほか | Comments(0)