winter's scarecrow

風を感じて

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Krzysztof Kieslowski (クシシュトフ・キェシロフスキ)監督作品、

『ふたりのベロニカ』 ポーランド・フランス合作作品。
イレーヌ・ジャコブ(ヤコブ)主演。 1991年、カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞。

キェシロフスキ監督がベルリンの壁崩壊後、初めての西側との合作作品。

キェシロフスキは社会主義体制の終焉を迎えようとしていた1988-89年、テレビ放映用に制作された10話からなる『デカローグ』を撮影している。
私の観た全ての映画のなかで一番、心震わされた作品群。

10代のときにアンジェイ・ワイダ監督の『灰とダイアモンド』、イエジー・カワレロビチ監督の『夜行列車』を名画座で観て、あのポーランド映画独特の空気感に打ちのめされた。
ワイダやカワレロビチは先の大戦後のスターリンイズムの吹き荒れるなか、何度もの検閲を受けながらも体制へのプロテストを作品のなかに散りばめていた。
それは台詞で表す訳ではなく、人がいかにidentityを持ち、人間としての尊厳を保ちつづけていられるか・・それを演じる。 
そのこと自体が反スターリンイズムの映画となっていた。


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同じ年、同じ月日、同じ時刻に生まれた、二人のベロニカ。
ポーランドの田舎町に生まれ、合唱団でソプラノを歌うベロニカ、学生と警察隊が対峙している広場で西側から訪れた観光客のバスのなかに自分と同じ髪の色、容貌をしたもう一人のベロニカを見て立ち尽くす。
ベロニカは演奏会のソプラノの独唱をしている最中に心臓発作で命をおとす。

パリの郊外で生まれたもう一人のベロニカは行きずりの恋を捨て鉢に、自分の心の置場所を見つけられず暗澹とした日々を送っている。
音楽教師をしている小学校で、人形劇の公演にきた童話作家でもある人形師に運命的なものを感じる。
亡くなったベロニカに導かれるように、二人分の命を生きるように、本当の恋を掴もうとするベロニカ。


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アンバーな色調の映像でベロニカの心情風景を描いている。
歪んだガラスから見えてくる風景、歩く廊下や部屋の外光が射す光りがまだらに揺れている。
光りで幾重もの人々の心のアヤを表現している。
この映画では余分な効果音を殆ど使わず、ベロニカの足音を強調している。
ベロニカの歩みと躰に伝わってくる反響。
言論統制下で物づくりをしてきた作家の知恵と巧みな表現方法なのかもしれない。

『ふたりのベロニカ』の後、キェシロフスキは『トリコロール・三部作』を撮る。
社会主義体制下でも西側の資本のなかでも貫いているものは全く揺らいでいない。
1996年3月13日、心臓発作で54歳の命をとじた
いつまでもいつまでもキェシロフスキの風を感じていたい。

映画監督のなかで一番好きな監督を取り上げさせてもらいました。
映画をやっていた仲間が「Wさん、僕、映画を辞めて福井に帰ることにしたんです。田舎に好きな子がいるんです。色々と迷ったんですが、僕は女をとります。今まで観た何百本の映画がそうしろと教えてくれたんです」
と気絶でもしそうな名言を残して帰省した男がいました。
今は鯖江でメガネを作る職人として生きています。
これからスコットランドの超軟水の"DEESIDE"をチェイサーにアイリシュでも呑もうと想っています。
この超軟水、すごーく旨いんです。一度、試してみてください。
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by w-scarecrow | 2009-03-06 23:17 | 映画 | Comments(6)
Commented by oko at 2009-03-07 00:12 x
こんばんは!!
おっと 日付が変わりましたね。
超軟水だと紅茶にも合うのでしょうか?
楽しい週末を...
Commented by w-scarecrow at 2009-03-07 00:33 x
okoさん、ほんとの軟水で今まで味わったことのないミネラルウォーターです。
チェイサーにして飲むといいですよ。
もちろん紅茶(レミー・マルタンの入っていない)にもいいですよ。
是非、飲んでみてください。
Commented by Kirara at 2009-03-07 09:40 x
その方の人生を大きく変えるほどの女性。。。
きっと素敵な人だったのでしょうね^^

*また映画のお話し 聞かせてください^^
Commented by w-scarecrow at 2009-03-07 10:16 x
kiraraさん、おはようございます。
運命的なものを感じるってありますよね。
この人と生きていくんだっていう。
映画の話をすると長文になってしまいます。
もっと端的に紹介しなければいけませんね。
Commented by mico_hidamari at 2009-03-09 01:02
20代前半の頃に『トリコロール・三部作』を見ました。
でも当時の私には難しく、暗い映画だな~くらいにしか思わなくて・・
今見たらまた違った印象を受けるかもしれません。
Commented by w-scarecrow at 2009-03-09 10:51 x
micoさん、おはようございます。
「トリコロール」今、観たら違うとらえ方で観れるかもしれません。
ジュリエット・ビノシュが出てた「青の愛」が人気がありました。
僕はヨーロッパの映画は洋楽を聴くときと同じ感覚で映画を観てしまいます。
"感じる"の一点で。だからストーリーは憶えていない作品ばかりです。あまい良い見方ではないのかもしれません。
mico家の次の工場見学は「寿がきや」だと想っています。