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winter's scarecrow

香水

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「わたし大好きなんだ・・池上さん」「誰?不動産屋の社長?」
「なんか一緒にいるだけで、1と2だらけだった通信簿が3と4になれる気がしない?」「あの、蕎麦屋のオヤジ?!」
「・・池上彰さん」

キャバクラでは年がいき過ぎている、しょぼくれたスナック勤めではない30代の疲れた女子が片手にメンソールの煙草、ハイボールの氷をくゆらせながら飲んでいる。


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尾崎豊の ♪15の夜 ♪ と同じような揺らいだ時期があった。 悶々とした精神状態から抜け出そうと高校受験を前にした中3の春から秋まで新聞配達をした。

朝4時に専売所に着き、自転車の大きなカゴに扇型にした新聞を山のように積み、出発。
今はお洒落な町に変貌した恵比寿の町、当時は木造やモルタル造りのアパート、専売公社や官庁の住宅が多く建ち並んでいた。

新聞配達をして数ヶ月もすると各家の生活パターンが解ってくる、古びたアパートの住人たちは早起きだ。
台所では調理が始まり、ラジオの音が響いている。

同級生の M くんちは最も古びたアパート、内廊下を歩くたびにキシキシと音がする。 彼の家は父子家庭、弟2人と6畳一間に住んでいる。
早朝からお父さんの元気な声がする。
M くんは運動神経抜群で勉強もクラスで1,2番。
彼は同級生の私が毎朝、新聞を扉の前に置いているとは最後まで知らなかった。

別のアパートでは嬉しいやら照れくさいやら、そのアパートに入っただけでその女性が帰宅しているかどうかが判った。
強い香水の匂いで判った。
その女性は浅田真央ちゃんのお姉ちゃんみたいな別嬪さんで、部屋の前でかち合ったこともあった。
かなり酔っていたのか「ありがと新聞少年」と抱きつかれたことがあった。
「いつか大きくなったら店においでね」みたいなことをもぞもぞと言いながら「チップ」と私の手に500円札を握らせた。
その当時の500円、大金だった。
いつか、お金が貯まったらすぐにお姉さんのいる店に行こう! と15の朝。


池上彰さんみたいなオジサン、目指さなきゃ!
長雨がつづいています。 気分が滅入らないように古今亭志ん朝の落語を聴いています。



by w-scarecrow | 2017-10-16 22:10 | そのほか