winter's scarecrow

アンテナ

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「ベトコンはオレをニガーとは呼ばない、アジアの貧しい人を殺すなんて冗談じゃない、白人こそ自由の敵だ」

ローマオリンピックで金メダルを獲得し、その後も数々のタイトルをものにしたムハメッド・アリ、変わらない差別に憤り入店を断られたレストラン近くの川にメダルを投げ入れた。

ベトナム戦争への徴兵を拒否し、それまでの栄光のタイトルを剥奪された。

「過剰なほど自己を信じる能力」とアリについて作家・沢木耕太郎は著書 " 一瞬の夏 ” で記している。

ロサンゼルス五輪での聖火を危なげに持っていたアリの姿が甦る。 権力や裏社会と闘いつづけてきたスターが病魔と闘っていた。 

闘うこと、どれだけの負荷をかけ自分と闘ってきたんだろう?


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返還前の香港の旧・啓徳空港へ初めて降り立ち、九龍から裏街へ行った。

ダストから流れてくる強い香辛料や油の匂いが人々の放つ体臭と相まって街中を包み込んでいる。

狭い小路には生きたままの食肉用の鳥たちやケージに入った爬虫類が店頭に並び、短パン一丁の主人が煙たそうに煙草をふかしている。

華やかなビル群の狭間とその影に暮らす人々。

そんな歴史ある街の匂いと混沌と、デカダンと奔放さと熱気に私は圧倒されつづけた。

沢木耕太郎の " 深夜特急 " で沢木が乗った香港島へ向かうスターフェリーにも乗ってみた。

今まで自分が身を置いていた酔狂な街路の興奮から覚め、心穏やかになっていく・・。


『私が旅という学校で学んだことがあるとすれば、それは自分の無力さを自覚するようになったのかもしれない。旅に出なかったら自分の無力さにずいぶん鈍感になっていたような気がする』

『無力な自分が悪戦苦闘をしているところを、他人のようにどこからか眺めていると、少しばかりいじらしくなったりもする。おい、おい、そんな頑張らなくてもいいものを、と』沢木耕太郎

" 深夜特急 " を読んで香港・マカオ、南アジア、インド、イスタンブールへの旅をされた人も多かったはず。

あの当時の私には「未経験」という財産つきの若さがあった。

今は、寅さんのように日本の風情ある地方都市で、どこからか現れるマドンナと出逢う、そんな軟派な旅を夢見ているかもしれないが、まだ当時のような感受性は残っている、と思う?!

感受性のアンテナを磨きながら期を待つことにしたい、と思う。 頑張ろうっ。
by w-scarecrow | 2016-06-08 19:35 | そのほか | Comments(2)
Commented by mother-of-pearl at 2016-06-09 11:56
殺されてしまうかもしれない程の状況の中での行動や発言だと思うと
凄いパワーだ、と感嘆してしまいます。
『彼は僕のヒーローです』と常々話してくれている仕事相手が、しみじみ語ってくれました。

>あの当時の私には「未経験」という財産つきの若さがあった。

本当にそうですね~。
経験という名の垢、角質に被われた我が心を少し削ってきます。

かかしさんも、良い旅を!
Commented by w-scarecrow at 2016-06-10 11:22 x
mother-of-pearl さん、こんにちは。
どこまで不屈なんだろう?!
リング以外の想像を絶する闘い、世界の人々の心を打ったのでしょうね。
欧州や米国へ行っても感じられない熱さがアジアの街にはあるんでしょうね。
同じアジアの文化圏で生きてきたのに、こんなにも違うんだと感じました。香港の街のあの匂い、ベタッとした感覚をまた味わいたいですね。