winter's scarecrow

さくらの物語

                  さくらはまだ咲いていませんが

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東京五輪招致エンブレムの " 桜のリース " をふたたび眺めながら想う。

さくらのアーチの校門をピカピカのランドセルを背負いくぐってゆく一年生。さくらの淡い花びらがひらひらと舞い祝福する。

車窓から皇居外堀に咲く夜桜を見やる、勤め人風なお父さん。
宴席の帰りなのか少し頬を赤らめシルバーシートに座り、膝の上には花束を抱えている。満足感と一抹の寂しさが映る最後の通勤電車。

奈良吉野山の古来桜が儚げに可憐に尾根から尾根へ、谷から谷へと見事なグラデーションで埋め尽くしている。
遠くに望む古のさくら、幾千のさくらの物語があったのだろう。

「さよなら」と「こんにちは」のさくらの物語。



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東京五輪招致エンブレムを作成した当時、美大生だった島峰藍さんのさくらをモチーフとした作品が決まったのは東日本大震災の年の秋。

五輪カラーの赤、青、黄、緑に江戸紫を加えた。

さくらの花を丹念に観察し、花びら一枚一枚に動きを取り入れたという。そんな花びらからは躍動感と江戸の粋が伝わってくる。

日本人の誰もが共感を抱き、自分のさくらの物語と重ね合わせたかもしれない。


新しい五輪エンブレムの一般からの募集が始まっている。以前の世界で7つの権威あるデザインコンテストで2つ以上の受賞歴があるという制限がなくなり、狭いデザイン界からの仲間内の選考委員も今度は経済界、スポーツ・芸能界などから選ばれた15~20人の選考委員で選ばれるという。

政府・役所が好きな有識者会議のようで、ある程度は出来合いレースの感も否めない。多すぎます顔見世の人が。

斬新なデザイン、artistic なデザインとは丸と直線の定規で描いたものなのか。今度はどんな視点で " 東京 " を審査をしてくれるのだろう。


島峰藍さんの描いたさくらリースのエンブレム、リースには再び戻ってくるという意味があるらしい。


劇作家・歌人・寺山修司の追悼集によせられた寺山の母からの亡き息子への言葉「五月に咲いた花なのに 散ったのも五月だった」

寺山の生まれた津軽に訪れる遅い春、弘前城の明媚な満開のさくらが散るころ、寺山は47歳の若さで逝った。


人の儚さ、人の美しさ、いくつものさくらの物語。
by w-scarecrow | 2015-11-27 09:14 | そのほか | Comments(0)