築地市場場内
築地市場の場内、高校時代の3年間東急百貨店の魚屋でアルバイトをしていた時も、何度となく親方に連れてきてもらった。
親方のひとり娘の Y 子は同級生の遊び仲間。 娘の話になると眉間のシワがティラミスの断面みたくなってくる。
場内へ行ったときにまず驚いたことはおばさんたちの言葉が「てめぇ~」「そこのボンクラ!」
「ぐだぐだ言ってんじゃねえよ!」の男勝りの数々。
「すごいですね、おばさん!」「wよ、河岸では70を過ぎたおばさんでもお姐さんと呼ばなきゃいけないんだ。反対に60を過ぎたおじさんの使用人はいくつになっても若い衆」
「あのお姐さんたちは、乙女だったころもあったんだ。でも男ばかりの世界に入って、ちょっと厠へ行こうとしても男衆から卑猥なヤジを飛ばされたり、好奇の的になりながら、今や男を超えちゃって別な生き物になったんだ」そんなことを言っていた。
「wよ、客はカジキマグロって言ってけどそんな怪物みたな魚はいないから、ここではちゃんとカジキと呼べよ」
いっぱい教わった。 正月も毎年親方の家で新年会。娘の Y 子の着物姿に「似合ってんじゃん」と言ったら額がティラミスになっていた。
映画の助監督たちは河岸勤めが多かった。
TVの仕事をすれば喰いつなげられるのだが、一途な映画人もいた。 私の周りの助監督は奥さんや彼女が医者だったり航空会社、広告代理店、看護師とパワー溢れる連れ合いが多かったので "芽の出ない役者と助監督" の定番のヒモ状態もいた。
先輩助監督の T さんは知的障害をもつ息子さんがいた。 感動した小説があると毎回、私に企画書を書いてくれと頼んでくる。
それを持って先輩の働く築地へ。昼には仕事が終わっているので二人で場外の飲み屋へ。
「wよ、ちゃんと本(脚本)だけは書いとけよ、監督になるのは才能ではなく、どう周りと立ち廻れるかだらTV の奴らでも馬鹿にしないで、ちゃんと懐へ入っとけよ・・」
自分の不得手なことを私に託したのだけど、私も先輩と一緒だ。
2週間で書き上げた企画書のお礼は築地の場外で消えていった。
築地場内は奇妙な乗り物の " パタパタ " が縦横無尽に走っている。 決まりごとではないが場内の交通ルールのルーティンがあるらしい。
午前10時を過ぎた築地の場内は祭りのあとの淋しさみたいで、しみじみとくる。
by w-scarecrow
| 2015-11-06 20:45
| 散歩