うずらの玉子
道往くお父さんたちは皆、疲れきっている。お盆休みの終わった月曜日、きっとユンケルの売り上げは上がっているだろう。
やっとのことで高級旅館を予約し海鮮三昧の豪華な食事、息子や娘へのお土産を手に帰宅したら「あ~やっぱりうちが一番」とソファーに寝転ぶ韓流好きの古女房。
佐野研二郎氏の過去の作品を遡って検索疲れをしたお父さんも目をパチパチしながら歩いている。
発泡酒を呑みながら昼間からゴロゴロと高校野球を観ていたお父さんは少しばかり元気だ。
ものを食べるとき、好きなものを初めに食べるか、最後にとっておくか?
最後にとっておくと答えた人は70%以上いるらしい。
秋元康やテリー伊藤はまっ先に好きなものを頬張っていると思う。人生のサバイバルを勝ち抜くにはそうしなければ生きていけない。
もちろん私は中華丼のうずらの玉子は最後に〆として食べる。
桶に入ったにぎり寿司も嫌いな順番に食べていく、最後はコハダ。
この好きなものを最後にとっておくという法則は数々の悲劇を呼ぶ。
中学3年のときに長めの髪を後ろで束ねた、切れ長の目をした転校生の女子が入ってきた。
少し大人びた美人。
こういう子には必ず、面倒見のよい(お節介な)ぽっちゃり気味の女子がコバンザメのように張りつく。
この涼しげな転校生は時折、ふだん見せない笑顔になる。
「wくん、この前から我慢をしてたんだけど、そろそろ取っていい?!」
私の肘にできた " かさぶた " を取りたいと大人の女の笑顔で言っている。
いつものようにポジティブに勘違いをしてしまった私はあの美人をどうしたら落とせるかばかりを考えていた。
とりあえずアイドルのマネージャーのようにこびりついているコバンザメと仲良くなり親交を深めなければいけない。
コバンザメとの親交に時間を取られた結果、転校生の美人はバスケ部の鼻持ちならない男にバレンタインのチョコレートをプレゼントし、私はコバンザメからチョコをもらうことになってしまった。
男はパスをもらったらすぐにシュートしなければ生き残れない!
でも親子丼を食べるとき、みつばが玉子と絡みあった部分は最後に残したい。
by w-scarecrow
| 2015-08-19 20:51
| そのほか