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winter's scarecrow

それはいつも夏

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胸がキュンとするような思い出、それはいつも夏。

記憶のページに記された文字は長い時間に薄れつつあるものの、あの感触は間違いなく躰のどこかにしまわれている。

音楽や映像や街の匂いがふいにその扉の鍵を開けることがある。


高2の夏、リバイバル上映で飯田橋の椅子の固い映画館で観た覚えがある。 
1970年代初めの映画『 八月の濡れた砂 』。

いつもリバイバル上映2本立ての映画館でデートすることが多かった。 3時間、会話をしなくて同じ感動を共有できる。

爽やかな青春映画ではなく、なにをやっても満たされない、なにをやっても感動が持続しない、にも拘らずほかに方法も思いつかないで、同じことを繰り返してしまう若者たち・・。

レイプシーンもあったので高校生の私にも隣で自作のサンドイッチを食べていた彼女にも刺激が強かった。

湘南の海、そこにたむろす男女、自虐的な日々、自分の知らない世界に衝撃を受けた。

彼女の住む新宿番衆町まで暑い夏の夜道を無言で帰った覚えがある。歩きながら整理をしようとするのだがまだそれだけのキャパがなかったのかもしれない。



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" 八月の濡れた砂 " で流れていた石川セリ(井上陽水の妻)の同名曲が、今では聴くことはないが強く心に残っている。


                私の海を 真赤にそめて
                夕陽が血潮を 流しているの
                あの夏の光と影は
                どこへ行ってしまったの
                悲しみさえも 焼きつくされた
                私の夏は 明日もつづく

                打ち上げられた ヨットのように
                いつかは愛も くちるものなのね
                あの夏の光と影は
                どこへ行ってしまったの
                思い出さえも 残しはしない
                私の夏は 明日もつづく

                                   作詞:吉岡オサム



夏休み。楽しいことも心痛むことも、まだ見ぬ世界を知ることも、たった一か月でその全てが突如やってくるかもしれない。
そんなひと夏の経験で、他人の心の痛みも知るんだろう・・。

と「夏」を語っているひとり者の言葉には説得力がない。

カラオケでサザンの ♪ 真夏の果実 ♫ を歌い、「わっ、うちのお兄ちゃんより湘南っぽい」と言われ有頂天になっている自分が切ない。
by w-scarecrow | 2015-07-19 20:18 | my back pages