winter's scarecrow

匂いガラス

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駒場にある東京大学生産技術研究所(駒場リサーチキャンパス)内を歩き、かじかんだ手でシャッターを押した。
以前は東大宇宙航空研究所と呼ばれていて、終戦前までは航空研究所、海軍のゼロ戦の開発、実験もこの場所で行われていたらしい。

ゼロ戦というと皆、少年時代の心弾ませた頃に戻ってしまう。
と言ってもプラモデルの世界。
この場所で風力実験・・・かぁ。

唐十郎の短編集に 『 匂いガラス 』 というのがあった。

祖父と少女との貧しい暮らし。 その少女の宝物だった擦ると甘い林檎の匂いがするガラス片。
タイから出稼ぎに来て風俗店に勤める女、彼女の思い出のなかにも同じ甘い匂いがするガラス片があった。

旧日本軍の基地があった場所では同じようなガラス片が転がっていたという。

ゼロ戦の風防ガラスの破片だったことを知る。
実際、ガラスよりも粘り気があるアクリルのようなものだったらしい。
そんな匂いガラスを巡っての男と女の面白い短編だった。


歩きながらガラスを探したが、そんなロマンのある欠片はなかった。



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バラの花を小説に挟み込む。
押し花となったバラは何年たっても、美しい記憶のように香りを放つ。
映画 『 八月の鯨 』 を観ることは、心のひだにバラを挟み込むようなこと、と淀川長治さんは評していた。

なんて素敵な表現なんだろう。 言葉の貯金箱に入れておきたい。


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『 八月の鯨 』 はニュープリントで今、岩波ホールで再上映されている。

先月亡くなった総支配人・高野悦子さんが商業ベースに乗りにくい名作を、東欧やアジア、南米など当時、全く目にすることができなかった名作の数々を紹介してくれた。

ギリシャ映画 『 旅芸人の記録 』 、ブルガリア映画 『 密告の砦 』 、中国映画 『 芙蓉鎮 』 、そして 『 八月の鯨 』 等々、どれだけこの映画館から力をもらったかわからない。
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by w-scarecrow | 2013-03-04 20:58 | my back pages | Comments(0)