winter's scarecrow

私的日本映画史

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昨年の1月に "私的世界映画史” という今まで影響を受けた世界の映画作品をラインナップさせてもらいました。

一年後、今度は日本映画を年代順にラインナップいたします。

昭和の薫りがプンプンする名画座でむさぼるように観た古き映画作品。

洋画からは夢をもらい、邦画からは辿ってきた道や現実を目にし、学校の授業の何十倍もの詰まったテキストを開いたような日々。

戦前から昭和までの好きな日本映画の数々、ここには書ききれない名作、いぶし銀のような小作品もありますがまたいつの日か取り上げさせてもらいます。


★ 祇園姉妹    1936年 溝口健二監督作品 出演:山田五十鈴

★ 人情紙風船   1937年 山中貞雄監督作品 出演:河原崎長十郎

山田五十鈴の艶やかで小粋な演技の ”祇園姉妹”、山中貞雄監督の斬新な表現力、日中戦争当時に作られたとは思えぬ完成された作品。


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 酔いどれ天使  1948年 黒澤明監督作品 出演:三船敏郎、志村喬
★ 野良犬       1949年 黒澤明監督作品 出演:三船敏郎、木村功

終戦から "酔いどれ天使” までの3作品は穏やかな市民像を描いた松竹映画のような作品、これ以後黒澤さんのコアな部分がくっきりと見えてくる。

★ 麦秋        1951年 小津安二郎監督作品 出演:原節子、佐野周二




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★ めし         1951年 成瀬巳喜男監督作品 主演:原節子、上原謙
★ 山の音       1954年 成瀬巳喜男監督作品 出演:原節子、山村聡
★ 浮雲         1955年 成瀬巳喜男監督作品 出演:高峰秀子、森雅之


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今村昌平監督が松竹の助監督時代、あんな凡長な家族劇ばかりを作っている小津さんの下にだけは付きたくなかったと語っていた。
木下(恵介)組は美男子の優男以外は無理だったとも。
その後、松竹の有能な助監督は活気づく日活映画へ移籍し、監督となって名作の数々を作ってゆきます。

”麦秋” の麦畑が風にたなびくラストシーン、白黒の画がまるで色の付いた画像に見えてくるようで心に残っています。

「やるせなきお」と呼ばれていた成瀬巳喜男監督。 小津さんとは似ていて非なる作品群、しっとりとした情緒感や人々の機微の描き方がやみつきになります。
”浮雲” の森雅之の淡々とした語り口、高峰秀子の強さと引き替えの脆さ、沁みいってきます。



★ 洲崎パラダイス 赤信号  1956年 川島雄三監督作品 出演:新珠三千代、三橋達也、芦川いづみ
★ 幕末太陽伝     1957年 川島雄三監督作品 出演:フランキー堺

私の中で最も好きな監督の小作品、川島雄三監督自身も思い入れの強かった ”洲崎パラダイス”、 売春防止法施行直後の東京、勝どき橋の上で「これから何処へ行こうか」と思案している二人、やってきたバスに乗り、洲崎パラダイス入口で下車する二人、儚く切ない底を見てきた男と女の物語。そば屋の店員役の芦川いづみが美しかった!

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★ 炎上          1958年 市川崑監督作品 出演:市川雷蔵

★ 太陽の墓場      1960年 大島渚監督作品 出演:津川雅彦

★ 武士道残酷物語   1963年 今井正監督作品 出演:中村錦之介

★ にっぽん昆虫記   1963年 今村昌平監督作品 出演:左幸子
★ 赤い殺意        1964年 今村昌平監督作品 出演:春川ますみ

★ 月曜日のユカ     1964年 中平康監督作品 出演:加賀まりこ

★ 侍            1965年 岡本喜八監督作品 出演:三船敏郎


市川雷蔵の瑞々しさ、市川監督作品の宮川一夫カメラマン、大映技術スタッフの素晴らしさに溜息が出ます。国宝の金閣寺ではなく当時の大映京都の活動屋に無形文化財の称号を与えたい程の芸術の結晶です。

そして今村作品を初めて観たときの驚き、”月曜日のユカ”の加賀まりこの可憐さ、共演の中尾彬の芝居の下手さが愉しいです。
独立プロ製作の今井正監督作品の中村錦之介の迫力に圧倒されます。すごい!

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★ 日本列島        1965年 熊井啓監督作品 出演:宇野重吉、二谷英明

★ 飢餓海峡        1965年 内田吐夢監督作品 出演:三国連太郎、伴淳三郎、高倉健

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★ 私が棄てた女      1969年 浦山桐郎監督作品 出演:浅丘ルリ子、河原崎長一郎 

★ 沖縄            1970年 武田敦監督作品 出演:地井武男、佐々木愛

水上勉原作の 〝飢餓海峡” を16mm フィルムで映画化した名作、何故名匠内田吐夢監督に35mmで撮らせてあげられなかったのだろうと痛感します。
伴淳三郎の名演に打たれた作品、黒澤監督の ”どですかでん”でもピカピカに輝いていました。

1960年代まででこれだけの行数になってしまいました。 1970年代、日本映画の衰退期、そんのなかでも光る作品がいくつもありました。

"寅さん”48作品も毎年、新年の愉しみで観てきました。 眠くなった(下條さん)おいちゃんが「おい!マクラ、悪いけどサクラ取ってくれ!」名台詞、今でも想い出しフッと笑ってしまいます。

また次の機会に’70年代以降の映画をupしたいと思います。
全く偏った私的日本映画史、最後まで目を通していただきありがとうございました。
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by w-scarecrow | 2012-01-15 00:40 | 映画 | Comments(4)
Commented by 至福の月 at 2012-01-17 14:30 x
「麦秋」いいですよね。
「月曜日のユカ」の加賀まりこチャン、とってもキュートで大好きです。
Commented by w- scarecrow at 2012-01-18 00:13 x
至福の月さん、原節子の”紀子”の三部作「晩春」はキネ旬のベストテンに入っているのですが「麦秋」はいつものキャストとは違って新鮮でした。ラストシーンの麦畑の画は秀逸でしたよね。
「月曜日のユカ」の横浜の街々の風景、すごく新鮮でした。
中平康監督は「狂った果実」の演出で鮮烈なイメージで出てきて日活を引っ張っていく監督だったのですが、晩年は香港へ渡ります。
私の経緯と被るので、中平さんの顛末を調べて香港を舞台にした「ある映画監督」を主人公とした企画書を書いて、映画化にしようと動いたのですが、興行的に・・無理ばかりの反応でした。
Commented by 花子 at 2012-01-18 22:48 x
幕末太陽伝って居残り佐平次が原作ですよね。今月上映されているようですが、お勧めと言われると気になります。
名画座という響きは映画に対する暖かい思いが込められていていい言葉ですね。
Commented by w- scarecrow at 2012-01-18 23:38 x
花子さん、”居残り左平次”です。
津軽出身の川島雄三監督、自らも躰に障害を持っていて現場に立っていたのですが、表の物は裏と言い、卑屈な部分が演出にしかと感じられます。
表層と基層、裏返し、本当になにかを感じ取れると想います。
フランキー堺の名演、是非観てくださいね!