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winter's scarecrow

永遠に・・・

このBlogをいつも読んでくれていた80代半ばの女性が今朝、永遠の人となられた。
早朝、娘さんから「ありがとうございました」と連絡があった。
おばあさんが電話をかけてこられるときは、若い娘のような可愛らしい声でいつも笑っていた。
娘時代の色褪せた画が、話しているうちに少しづつくっきりと色付いてきましたよね。
こちらこそ、いっぱいありがとうございました。 どうぞ想い出多き霧島の山々の天空から見守っていてくださいね。


永遠に・・・_e0158857_19253335.jpgわたしが一番きれいだったとき
            茨木のり子

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達が沢山死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった

わたしが一番きれいだったとき
誰もやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発っていった

わたしが一番きれいだったとき
わたしの頭はからっぽで
わたしの心はかたくなで
手足ばかりが栗色に光った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのし歩いた

わたしが一番きれいだったとき
ラジオからはジャズが溢れた
禁煙を破ったときのようにくらくらしながら
わたしは異国の甘い音楽をむさぼった

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように 

by w-scarecrow | 2011-09-14 23:32 | そのほか