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winter's scarecrow

十穀米

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実家に小さな卓袱台を届けに行った。

母はデーブルで食事をすることはなく、座敷で正座をして食事を摂っている。
今まで使っていた卓袱台はあまりに背が低く、皿や鉢を手に取りながら食べている姿がしんどそうだった。

帰り際、十穀米を渡された。
「お前は生活習慣病そのものだから、少しは躰にいいものを食べないと・・・今からじゃ遅いか?!」

亡父は戦中戦後の食糧難の時代のトラウマをずっと引きずってきたせいか、白米以外は食べなかった。
どんなに貧乏でも米だけは旨いものを食べたかったみたいだ。

その時代を生きてきたお年寄りは、小麦粉と塩だけで作ったすいとんやちくわぶ(関東以外の人は馴染みのないおでんの具)を嫌がる人と好んで食べる人とさまざまだ。
亡父は大好きだった。
ただ、戦後の配給でサツマイモやカボチャばかりを食べていたせいかイモ類は好んで食べることはなかった。

昭和26年の映画で成瀬巳喜男監督の『めし』という大好きな映画がある。
原節子と上原謙の夫婦の物語である。 
大阪を舞台にしていて当時のミナミの繁華街や大阪城、阿倍野の住宅が映し出されている。 
くいだおれ人形も出ていた記憶がある。

倦怠期を迎えた夫婦は些細なことで喧嘩を繰り返し、単調な日々の中、徐々に亀裂が生じていく。
タイトル通り、卓袱台で食事をするシーンが多く出てくる。
” 花のいのちは短くて苦しきことのみ多かりき " の林芙美子の原作。
原節子の浮かべる寂しげな表情が強く印象に残っている映画、成瀬巳喜男の淡々としていて情緒のある語り口が好きだ。

梅雨の合間の爽やかな土曜日、イワシのつみれ汁が食べたく、これから笹塚まで食材を買いに行ってきます。
by w-scarecrow | 2011-06-04 17:44 |